· 

自分に影響を与えた作品の話とか


あけおめ

おい お前らには「価値観を変えた作品」みたいなのあるか

すみません
皆さんには「これを見て自分の価値観が変わった」みたいな作品はありますか

私はそういうのあるかって聞かれるとひとつ思い当たる映画があります

あんまり映画たくさん見る方じゃないんですけど
「ひつじ村の兄弟」っていうアイスランドの映画がありまして
その昔まだサブスクとかいう概念が無かったかそんなに浸透してなかった時代に
TSUTAYAでたまたまおもろそうやんと思って借りたDVDがそれでした

コメディの棚にあったんだもの
コメディだと思って借りたんよ
調べたら今もコメディって分類で出てきたし
でも全然コメディじゃないです 結構暗い

ざっくりいうとめちゃくちゃ不仲な羊飼いの兄弟のお話で、主人公が弟だったはず
で、その兄弟はもうお爺ちゃんってぐらいの年齢なんだけどもうずーっとまともに口を聞いてないぐらいの不仲

弟は真面目で朴訥な感じだけど性格は穏やかで人付き合いも普通にできる
でもお兄ちゃんの方がすごい偏屈で気が強くて人嫌いで全然社交的じゃなくて、
村人はお兄ちゃんに対する印象めっちゃ悪くて、
弟もそんなお兄ちゃんをあんまりよく思ってない、みたいな雰囲気だった
記憶違いあったらごめん

そんな感じの兄弟の平和な日常を脅かすドタバタコメディ!みたいな謳い文句だったから借りた覚えがあるのにすごい鬱展開で何も笑えなかったよ
動物好きな人は特につらいと思う

正直に言うと見た後めちゃくちゃ暗い気持ちになってなんで私はこれを借りたんだろうってかなり後悔した
でもこうして何年も経っても人生で見た映画の中で一番インパクトが強くて忘れられずにいます

なんか、お兄ちゃんの方に自分や自分の苦手に思ってる家族を少し重ねてしまったというのもあり

ちょっと映画のネタバレ?にもなるんだけど
偏屈で扱いづらい人にも心はあって、その言動全てを嫌う必要はないよなって思えたので
自分自身が偏屈で人付き合いが下手だから理解できてしまった部分もある

映画の場合は弟だったけど 家族でなくても身近な人が、仲直りして仲良しこよしなんてしなくていいから1ミリでも歩み寄ったり理解する姿勢を見せてくれたら
どこか救われる部分もあるのかなとか
逆に自分が弟の立場だったとき拒絶や無視以外の選択をとれるだろうかとか
映画の中の展開だとそうせざるを得なくて、みたいな流れだったとも思うけど

たぶん日本ではちょっとマイナーな映画かもだから(カンヌでグランプリ取ったらしいので知ってる人は知ってるのかも)
ストーリー知ってる人もそんなにいないだろうし
かといって核心部分をベラベラ喋っちゃうのもアレだからどう書いたもんか難しいね

すごい鬱映画だったけど「他人を理解しようとする気持ち」みたいなことについて
見た後ずっと考えていた
それこそ見終わって10年ぐらい経った今でもじわじわとこう…頭の片隅にこの映画を見た後の気持ちがずっと残っていてそこから何かが染み出している
傷口に絆創膏を貼ったとき、絆創膏に血が滲んでるのが見えるあの感じ

とにかく凹むので1回きりしか見れてないんだけどラストシーンが忘れられずにいる
特段泣ける展開というわけでもなく(私はそう感じた)、ただ、「え、どうするの…どうなるの…」って不安で悲しくて寂しい気持ちになる
ラストシーンの後のことを考えたくないしラスト付近の展開についても考えたくない

別に嫌いな映画というわけではないんです
展開や描写が嫌いとかでもまったくない
めちゃくちゃ素晴らしい作品だと思ってる
ただ、大好きとも言い切れない
なんか好き嫌いの次元ではない、ただ忘れられない

コメディとあるから本当は面白い(funnyの方)のかもしれない
たくさんの人と一緒に見て、周りがワハハと笑っていたら自分もおもろと感じるのかもしれない
でも、あの日ひとりで見て感じた どうしようもない哀しみと辛さみたいなものの方を大事にしていたいから、
見直して違うことを感じるか検証みたいなことは今後もしないと思う

華やかな情景も艶やかな美女も何も出てこない
ただただ不仲なお爺ちゃん2人の微妙な関係性を曇った気分で見続けるだけの映画だけど、
この映画以外でこんな気持ちになったりここまで何かを引きずったり色々考えるきっかけになった作品って自分の人生では無かったので

そういう意味では「価値観が変わった作品」かなあと思います
ひつじ村の兄弟
興味あったら見てみてね